Blog:羅馬は一日にして成らず -2nd edition-

「よみがえる軍艦 エルトゥールル号の記憶」展 和歌山県立博物館2012.10.10

以前、串本に行った時に、串本沖合で座礁したトルコの軍艦について触れましたが、
それがエルトゥールル号です。そして実際にこの沈没船の発掘に携わったことのある水中考古学者の方と
串本の役所の方からいろいろと情報をいただき、9月 8日~10月11日に和歌山県立博物館で、この沈没船関連の展示がある
ということをお聞きしていたので、待ちに待って先日行ってまいりました。「よみがえる軍艦 エルトゥールル号の記憶」展です。

水中には軍艦の部品、調度品、生活用品、個人の荷物などが散在しており、それらを丁寧に引き上げた後は
保存処理が行われます。この処理は現在も続いているとのこと。

軍艦の部品・・・巨大な釘が印象的でした(画像あり)
調度品・・・ タンスのノブ、コンパス、鍋など
生活用品・・・食器、ランプなど
個人の荷物・・・チェーンなど

大きなものから小さなものまでさまざまな出土品が展示されており、 素材は鉄、銅、ガラスなどさまざまでした。
これら出土品は完成形のものが少なく、他の事例とともに何の一部でそれがどんなものだったのか簡潔な説明が
あってわかりやすかったです。

さて、ガラスもたくさん展示されていました。軍艦の遺物ということで、船に関わるものがほとんどです。

ガラス

撮影はできませんでしたのでコチラのブログを参考に。写真がある遺物もあります。

  • 航海用望遠鏡のレンズ・・・凹レンズと凸レンズの2枚が見つかっている。これらを貼り合わせて1つのレンズとして使うことで、光の波長の違いから像がずれて映る問題を軽減した(画像あり)。
  • 救命ボートあるいは羅針儀台の附属品?・・・楕円形の透明ガラス。縁にこれがフレームにはめ込まれていたような痕跡を残す。また気泡が残っているためレンズには使われていないようです。
  • 計量カップ片・・・メモリと「400」という文字が彫られている。乗組員で計量カップを利用するのは写真家と医者ということ。
  • サーチライトのガラス・・・断面が凸形になっている。これは特定の方向に強力な光を照射するためらしい。一枚のガラスではなく横長で両端が湾曲したガラス板数枚で1つの面を作っている。1枚1枚が枠に固定されていた痕跡が残る。
  • 左舷灯・右舷灯・・・船の左右に違う色のランプを付けることで、その船がどちらに向いて、どのくらいの速度で進んでいるか分かるようにするためのもの。英米の規定では左舷灯を赤色に、右舷灯を緑色にすることが決められていました。その通り、これらの色のガラス片が展示されています。みかけは板ガラスの破片です。
  • ランプの一部・・・ サンドブラストで描いたような模様があるガラス板でランプの一部とのこと(画像あり)。
  • ガラス瓶・・・スモーク、オレンジ、青、緑、淡い緑、トルコブルーといった様々なガラス瓶の破片。口元や底部とおぼしきものも。

展示コーナーはそれほど広くはありませんでしたが、内容的には深いものがありました。ガラスもこれだけたくさん展示されていて興味深かったです。板ガラスが多く見られるのが特徴です。当時、板ガラスといえばフランスというイメージですが、ガラスの製造地は分かりません。充実した展示品ではありましたが、残念ながらカタログがなく、冊子型のパンフレット(無料)のみでした。海中から引き揚げられた遺物もまだ保存処理中ということで、今後まだまだいろんな遺物が展示されていくに違いありません。その時にはいいカタログを作成していただければ非常に興味深いのですが・・・

ちなみにこの沈没船を題材に映画がつくられるそうです。

2012.10.10 23:38 | ブログ, 博物館へ行こう

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